NPO法人の役員変更登記
特定非営利活動法人(NPO法人)の理事変更登記のご依頼をいただき、無事完了しました。
司法書士が受任する会社・法人の登記は株式会社に関するものが圧倒的に多いため不慣れな部分もありましたが、「癖」のようなものがわかると興味深い点がいろいろとあり、勉強になりました。
株式会社の役員変更に慣れてしまっていると見落としがちな論点がありましたので、覚書として残そうと思います。
そもそも、NPO法人とは?
まちづくりや医療関係のニュース、記事などに「NPO法人〇〇」という肩書を見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
NPO法人とは、「特定非営利活動促進法」(以下、「NPO法」とします)に基づき設立された、「特定非営利活動」を行うことを主たる目的とする団体のことです。
特定非営利活動の内容は、以下のものがNPO法の別表に挙げられています。
一 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
二 社会教育の推進を図る活動
三 まちづくりの推進を図る活動
四 観光の振興を図る活動
五 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
六 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
七 環境の保全を図る活動
八 災害救援活動
九 地域安全活動
十 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
十一 国際協力の活動
十二 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
十三 子どもの健全育成を図る活動
十四 情報化社会の発展を図る活動
十五 科学技術の振興を図る活動
十六 経済活動の活性化を図る活動
十七 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
十八 消費者の保護を図る活動
十九 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
二十 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
NPO法人の登記事項
NPO法の第7条第1項に「特定非営利活動法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。」との定めがあります。
NPO法人は都道府県や政令指定都市が所轄庁となっており、設立や設立後の変更については所轄庁への申請・届出がまず必要です。
それとは別に、登記事項に関しては、法務局への登記申請をしなければなりません。
変更があってから2週間以内に申請することと定められています。
登記事項は以下のとおりです。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項
(組合等登記令第2条第2項より)
以前は「資産の総額」も登記事項でしたが、平成30年の組合等登記令の一部改正により、登記事項から削除されています。
四の「代表権を有する者」は、定款に代表権に関する定めがなければ理事全員を「代表権を有する者」として登記することになりますが、理事の中から「代表理事」「理事長」などの肩書で代表権を有する人を限定して登記している法人が多いのではないかと思います。
理事の任期で注意すべき点
NPO法第24条第1項に、「役員の任期は、2年以内において定款で定める期間とする。ただし、再任を妨げない。」との定めがあります。
文字通り、2年の範囲内であれば定款で自由に決められる、ということなのですが、横浜市のNPO法人の認証のページに、「第2期以降の役員の任期」として、こんな記述があります。
定款の「附則」で、役員の任期が「令和元年6月30日」までと記載されていた場合で、役員の選任が6月30日以前に行われていたとしても、任期翌日の令和元年7月1日から第2期目の任期がはじまります。
(横浜市ホームページより)
設立時の理事の任期を設立後最初の6月末(定時社員総会開催の時期)までとし、以降任期2年(2年後の6月30日まで)、というのが所轄庁が提供している定款の雛型で、横浜市以外でも散見されます。この場合、定時社員総会開催の日にちに関わらず、理事の就任日は「7月1日」となります。
株式会社のように「理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。」と定款で定められているのなら社員総会の日付で理事に就任することになりますが、そのような定款規定になっていない場合は社員総会での選任は「理事の予選」の扱いです。登記の際は就任日に注意しましょう。
代表理事選定で注意すべき点
各自代表(理事全員が代表権を持っている)ではなく理事の中から代表理事を選ぶ場合に、理事の構成メンバーが変わらないのであれば「代表理事の予選」も可能ですが、構成メンバーが入れ替わる場合は、新しいメンバー構成になってから(=新メンバーの就任日以降)代表理事を選定しなければなりません。
理事のメンバーが一人でも入れ替わる場合、上記の例ですと6月中に行った社員総会の直後に理事会を開催して代表理事を選定しても無効で、7月1日以降に新体制になってから代表理事を選定しなければならない、ということになります。
登記の際は理事会の開催日や理事の互選をした日付に注意が必要です。
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