専門家に依頼することの価値
もうずいぶん前の話ですが、学生の頃、友人と二人で4週間ほどスペインを旅したことがあります。
スペイン語専攻だったので、その実践も兼ねての旅でした。
私にとっては初めての海外旅行で、憧れていたスペインという国の空気、言葉、街並み、建物、芸術作品を目いっぱい楽しみました。
ピカソ好きな私のチョイスで、バルセロナのピカソ美術館を訪ねたときのこと。
同行の友人が、ピカソの絵の一枚を指して、こう言いました。
「この絵なら、私でも描ける!」
その絵がどんなだったかは、すごくシンプルな、クレヨンで描いたような…と記憶がおぼろげですが、
それを聞いて、すごくがっかりしたことははっきり覚えています(その時は口に出しませんでしたが)。
その絵をそのまま模写するのなら、確かに多くの人ができるかもしれない。
でも、それを描くまでの過程や思考が形になったものがその絵なのに、と思ったからです。
私たち司法書士の作る書類も、同じような「評価」を受けることがあります。
そんな簡単な申請書で登記できるんだ。
遺産分割協議書とか、ネットでちょっと調べれば自分で作れるでしょ。
自分でもできるのにお金(報酬)をかけて専門家に作ってもらうのもったいないよね…などなど。
確かに、司法書士に作ってもらったものを見て「このくらいの書類なら自分でも作れる」とお思いになる場合もあると思います。
ただそれは、いろいろなリスクを検討した上で、結果としてそのシンプルな書式に帰着したのかもしれません。
そのシンプルな書式で登記が通る/遺産分割協議書として問題ない/などと判断を下す。
以前、「お金はどのくらいかかるの?」でも同じようなことを書きましたが、その判断ができる人に頼むということが「専門家に依頼する価値」なのだと知っていただきたいです。
また、登記が通ったり遺言書ができあがったりその場は問題なく終わったように見えても、別の登記をしようとしたときや実際その遺言書に基づいて手続きをすることになったときに、漏れや不備が判明することもあります。その時点では対応のしようがないこともあります。
大事なご資産に関わること、小さなことでも気になったら、気にならなくても、ぜひ一度ご相談いただきたいです。
専門家に頼まずにやったら…の例は、今後いくつか書いてみたいと思っています。