ニュースから、遺言について考える

横浜は少し朝晩の気温が下がってきました。エアコンも扇風機もつけずに過ごせるのは、一体何日ぶりのことでしょうか。暑さに身構えていた体が緩んでいるのがわかります。

さて。先日ニュースで知ったのですが、9月5日(土)から14日(月)まで、「日本初の、遺贈寄付についてともに考える”遺贈寄付ウィーク2020”」というキャンペーンが開催されていたとのこと。9月13日が「国際遺贈寄付の日(International Legacy Giving Day)」とのことで、日本でも遺贈寄付について知ってもらおうと始めたキャンペーンのようです。

寄付はわかるけど、遺贈って何?

遺贈とは、ざっくりいうと遺言によって相続人以外の人や団体に財産を渡すことです。「ざっくり」としたのは、相続人に遺産の一部を渡す際に「遺贈する」と表現することがあるためです。死亡を契機に起こる財産の移動には、相続、遺贈の他に「死因贈与」もありますが、こちらは贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)とが贈与者の生前に「贈与者が死んだら渡す」という内容を契約によって決めておく行為です。遺贈は「受遺者」と称されるもらう人の意思を確認したりしなくても遺言に一方的に「○○に遺贈する」と書き込むことによって成立します。ただし、遺言が民法の規定にのっとったものである必要はあります。

日本では「寄付」というと「お金持ちがすること」という意識がまだ根強いようですが、自然災害の被災地への応援消費やふるさと納税、コロナ禍のクラウドファンディングなど、寄付に類する行為へのハードルが下がってきているため、冒頭のようなキャンペーンも開催しやすくなったのかもしれません。寄付される側も少額から受け入れてくれるところが多いようです。

「遺贈寄付」というのは、遺言で寄付する先を決めておく、ということなのですね。

遺贈を、どう実現するか

遺贈というと私は、公正証書遺言の作成をサポートしたある女性のことを思い出します。

末期ガンを宣告されたその方は、ご主人に先立たれ、お子さんはなく、ご兄弟は多かったのですがご存命なのはお姉さん一人だけで認知症を患っていました。キリスト教の信者さんで、自分亡き後は通っていた教会にすべて寄付したいという意向が最初はありました。財産の中には最後に入院するまで住んでいたマンションの一室がありましたので、教会とも連絡を取ってみると、不動産の寄付は受け入れが難しいとの返答。遺言の内容を変更することになりました。

先週末、7月から始まった「自筆証書遺言保管制度」についての研修を受けてきました。遺言する人の意思を実現するための選択肢が増えることは歓迎すべきことで、多くの方に利用されることによって改善されていくといいなと感じました。利用する際の最大の注意点としては、提出先の法務局では、遺言の内容を形式的にしかチェックしてくれないということが挙げられます。例えば「教会に不動産を寄付する」ということを意思として書き込むことはできますが、それがスムーズに実現するかどうかまではアドバイスしてくれません。

財産の内容や家族構成、自分の死後にどう使ってほしいか、は本当にケースバイケース。「遺言を書こう」と思ったら、まずは司法書士に相談してみませんか。その上で、費用をさほどかけずに思いが実現しやすい法務局での保管制度を選択するか、お金は少しかかるけれどしっかり中身を検討して公正証書遺言を作成するか、はたまた一人で作ってご自宅のタンスの中で保管するかは、ご自身でご判断いただければいいのですから。

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